築7年!地域工務店の住宅を丸裸にしてみた!隙間だらけの家VS隙間を絶対に許さない男の壮絶な戦い【前編】
小屋裏施工の闇?家の断熱気密を上げたいならこれをやれ!築7年の地域工務店の住宅を丸裸にしてみた!【後編】
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こんにちは、日本住環境 広報部(イエのサプリ編集部)です。
このブログでは良い家づくりに必要な情報を丁寧に解説していきます。
これから家を建てたいと考えている一般の方はもちろん、実際に家づくりに携わっている方にも「タメ」になる情報をお届けします。
高気密高断熱の家は室温を保ちやすく、一年を通して快適に過ごしやすいことが魅力です。さらに電気代の節約や家という資産を長持ちさせるほか、住んでいる人の健康を守ることにもつながります。
住宅の気密性能が悪いとカビや結露といった住宅トラブルだけではなく、シックハウス症候群を起こす可能性もあるなど、家にも人にも良くありません。
今回イエのサプリ編集部が訪問した北川邸も、気密性能が悪く冬場の寒さに長年悩まされていたそうです。
しかし、ご主人が住宅性能について学び、家中の断熱気密欠損のリカバリーをした結果、なんとC値1.0㎠/㎡を実現しています。
この記事では、気密性能の悪い家のデメリットや、北川さんが寒さを改善するために施したリカバリーのポイント、リカバリー後に残っていたスキマの場所まで、実際の住宅を例に詳しく解説していきます。
スキマ風による寒さにお悩みの方はぜひ参考にしてみてください。
※イエのサプリ編集部では、リカバリーを推奨しているわけではありません。リカバリーをする際は専門家に相談の元、自己責任で実施してください。
目次 [表示させる]
気密性能が悪い家に住むデメリット
【デメリット①】エアコンの効きが悪い(夏は暑く冬は寒い)
気密性能が悪い家はスキマから外気が入り、家中の室温を均一に保ちにくいというデメリットがあります。
エアコンを強くしなければ冬は脱衣所で寒い思いをし、夏は蒸し暑い部屋でエアコンが効くのを待つ必要があるなど、快適に暮らせるとは言えません。
冷暖房費がかさむうえに、家の中で寒暖差ができることでヒートショック現象を起こす危険性もあります。
【デメリット②】シックハウスなど健康に悪影響がある
気密性能が悪い家はスキマからの外気で24時間換気が効果的に機能しないという点もデメリットです。
室内の空気は、住んでいる人から排出される二酸化炭素や生活臭、ホコリやダニ、花粉など、様々な原因によって汚染されています。
そこで、窓を開け続けなくても室内空気を清潔にしてくれるのが、24時間換気システムです。
しかし、気密性能の悪い家はスキマからの漏気で24時間換気が正常に機能せず、汚染された空気が室内に留まり続ける危険性があります。
汚れた室内空気を日常的に摂取してしまうと、アレルギーやシックハウス症候群など様々な健康被害へのリスクが高まってしまいます。
気密性能がC値1.0まで改善!断熱気密リカバリーのポイント
入居当時からエアコンの効きの悪さや、冬場の寒さに悩まされていたという北川邸。
和室や階段室につながる引き込み戸をすべて締め切らないと、寒くてリビングで過ごせない状態だったそうです。
これまで気密測定をしたことがないという北川邸ですが、リカバリー以前のC値はおよそ3.0㎠/㎡程度ではないかと考えられます。
しかし、北川さんの徹底した断熱気密リカバリーの末、イエのサプリ編集部が気密測定をした結果、なんとC値が1.0㎠/㎡まで改善したことが判明しました。
リカバリーによって部屋の暖かさが明らかに変わったこと、冬場に毎年出ていた咳が止まったことなど生活環境にも一定の効果があったようです。
一体どのようなリカバリーでここまでC値を改善できたのでしょうか?そのポイントについて具体的に伺いました。
【ポイント①】家中の窓に内窓を設置
窓は住宅の中でも特に熱損失が多い部分です。
北川邸では大きな窓については業者に施工してもらい、小さい窓は北川さんがホームセンターの材料で自作した内窓を設置しています。
(上図)ホームセンターの材料で自作した内窓
(上図)業者に依頼して設置した内窓
こちらの排煙窓も北川さんが内窓を自作しています。ボールチェーン式のオペレーター部分には別途木枠を作って組み合わせていて、とても丁寧な施工がされています。
イエのサプリスタッフが内窓の枠に手を当てても全く冷気を感じませんでした。
実際に内窓を設置後は、引き込み戸をすべて開放していてもリビングで快適に過ごせるようになり、体感温度が明らかに違うと感じたそうです。
内窓はかなり有効な断熱の補強手段と言えます。
【ポイント②】コンセントボックスを約40か所に追加
コンセントボックスやスイッチボックスはスキマ風の原因になりやすい箇所のひとつです。
北川邸では専門の業者に依頼し、すべてのコンセントボックスに専用の気密カバーを追加しています。
※火災や感電の危険があるため、コンセントボックスを補修する際は必ず専門の業者に依頼してください。
【ポイント③】床下のスキマをすべて気密テープでふさぐ
床断熱の家の場合、床下の気密処理が甘いとそこから外気が大量に入り込み、1階の床全体が冷やされてしまいます。
床下についても北川さんが自ら潜ってリカバリーしており、断熱材と木材のスキマをすべて気密テープでふさいでいます。
リカバリーにかかった費用は?
北川さんのようにしっかり勉強して丁寧にリカバリーしていけば、自分で気密性能を上げることも可能です。
ただリカバリーにはものすごい労力がかかり、自分一人では補修できない箇所も少なからずあるため、おすすめはできません。
例えば床に気密テープを貼るような作業では、建てた後のリカバリーであれば暗い床下に潜って何ヶ月もかけてご自身で作業をすることになります。
しかし建てる前であれば、明るい現場の中、上から気密テープを貼るだけなので簡単です。
■関連動画■
【新築時にやれ】高気密は難しい?工務店 ハウスメーカーがやらない理由
必ず建てる前に断熱と気密の仕様を確認し、住んでからリカバリーする必要が無いようにしましょう。
冷気はどこから?断熱気密リカバリーでC値1.0㎠/㎡に改善された住宅に残されたスキマを徹底調査
気密性能C値=1.0㎠/㎡となった北川邸ですが、どのような場所にスキマが残っているのでしょうか?
残されたスキマの場所を徹底調査したので、建てる前にどのようなところに気をつけた方が良いか、ぜひ参考にしてみてください。
1F-和室の畳
和室で足元から冷気を感じる場合は、下地にできている段差のスキマが原因かもしれません。
一般的な和室では、畳を敷いたときにフローリングとの間に段差ができないように下地を下げてつくられます。
下地が下がるためフローリングとの間にできる四方のスキマを気密処理しなければなりません。
北川邸でもリカバリーをしてある程度改善はされたものの、わずかながらにスキマが残っているのを発見できました。
熱画像カメラで見てみると、はっきり端の方だけ青くなっているのがわかります。
1F-ドア枠のレール部分・間仕切り壁
フローリングとドアレールの枠のスキマからも外気が入り込んでいました。
ドア枠からもわずかですがスキマ風が確認できたことから、この部分の建て付け時にできたスキマのようです。
後日北川さんがこの部分を開けるとスキマが確認できました。
1F-通気パッキンの入った玄関框
玄関は気密パッキンを入れ気密層を連続させる処理が必要ですが、北川邸では通気パッキンが使用されていました。
そのため、框の上部から大量のスキマ風が入り込んでいました。
1F-シューズクロークの裏
シューズクロークの裏側は最終的に隠れてしまうため、最後まで気密処理がされないままとりつけられてしまうケースもあります。
前述の通気パッキンと合わせてこのようなスキマから外気がどんどん入り込むことが、玄関が寒い空間となってしまう大きな原因です。
2F-スキップフロアの框
前述のスキマが残された玄関から入った外気、もしくは天井(小屋裏)からの外気が、そのまま懐(1階の天井と、2階の床の間の部分)に入り、2階のスキップフロアの框部分まで冷気を届けていると推測されます。
2F-書斎のドア
こちらもドアの仕上げ材の縁からスキマ風がきていることを確認できました。
仕上げ材は気密部材では無いので、ここにスキマがあったとしても問題ではありません。
原因は2Fスキップフロアの框と同様に、天井と玄関まわりの気密処理が甘い部分にあると考えられます。
調査の結果、北川邸では玄関まわりを中心に気密処理が甘い箇所がいくつかあるようです。
玄関まわりから入り込んだスキマ風は懐を伝って、家中に冷気を届けてしまいます。
同様に疑われるのが天井(小屋裏)からの外気です。
続いては小屋裏空間のどのような場所にスキマがあるのか、見ていきたいと思います。
天井からも冷気が?小屋裏で注意すべきスキマの場所と対策を解説
小屋裏は日常の生活空間からは見えないため気づきにくい場所ではありますが、断熱・気密欠損が起こりやすい場所です。
北川邸を例に小屋裏によくあるスキマの場所を、実際の小屋裏内部を見ながら、その対策方法を解説します。
【解説①】気密性能の悪い家は注意!小屋裏によくあるスキマとは
・断熱材と木材の間
天井野縁を支える吊木のまわりと断熱材の間はスキマができやすいポイントです。
天井野縁の上に断熱材を敷き込むと、吊木が断熱材の間から飛び出るため、断熱材が捲れてスキマができ断熱欠損しやすい場所となっています。
・小屋裏の外まわり部分
外周部が気密テープで気流止めされていないと、気密層が途切れてしまいそのスキマから外気が入り込んでしまいます。
小屋裏に気流をはしらせないためにも、気流止めをしっかりと行い、壁内の空気を動かさないことが重要です。
・配管・配線まわり
天井には様々な配管や配線が通ります。ダウンライトなどの配線の上に断熱材を乗せただけでは、断熱材がめくれ上がりその部分が大きなスキマとなってしまいます。
さらに、この配線が分電盤へつながっていた場合、スキマからの冷気が分電盤を通り家の中へ広がってしまう原因にもなります。
【解説②】小屋裏のスキマの対策方法
ここでは小屋裏のスキマができやすいポイントについて、その対策方法をご紹介します。
前述のように、住んだ後からのリカバリーでは補修できない場所が少なからず発生してしまいます。
この北川邸も片流れ屋根の水下側については這っても入り込むことができ無い部分になります。
必ず建てる前にこういった部分の対策をするようにしましょう。
天井部分の対策についてはこちらのブログも参考にしてみてください。
【天井の断熱気密編】構造見学会で見るべき6つのチェックポイント
・気流止めの対策
(上図)before
(上図)after
間仕切り壁の気流止めがない家ではbeforeの写真のように、天井にスキマがあいた状態のままになってしまいます。
対策としては、気密シートを張り気密テープで他の天井の気密層と連続させる、もしくは乾燥木材で気流をとめて気密テープで残ったスキマを埋めていく方法があります。
■関連動画■
【保存版】新築で高気密にする際の「気流止め」のポイントまとめ
北川邸のように住んだ後の対策として断熱材を折って詰め込む方法もありますが、完全に気密をとりきることが難しいため、新築の場合であれば上記のような対策が望ましいと言えます。
・小屋裏の外まわり部分の対策
(上図)before
(上図)after
気密シート、もしくは袋入り断熱材の袋の部分を桁まで張り上げ、30㎜以上をのせた上でタッカー留めするのがポイントです。
さらに、気密テープを貼って気密シートと桁にスキマができないように処理していきます。
小屋裏に気流をはしらせないためにも、壁内の空気がまったく動かないことが重要です。
・配管・配線まわりの対策
(上図)before
(上図)after
天井の配管や配線の対策として最も重要なのは、丁寧に敷き詰められ、スキマなく埋められているかどうかです。
ただ、天井の断熱材は断熱等級4を超えると2層になることが多く、100㎜以上の厚さが出てくるため、きれいに敷き詰められていないことが多々あります。
配管の上に断熱材をのせただけになっていたり、配管するために設けたゆとり幅がそのまま放置されていたりして、大きなスキマができている現場も珍しくありません。
中には「気密シートを敷いてあるから大丈夫」と言われることもありますが、気密欠損ではなく断熱欠損につながるため、このようなスキマには追加で断熱材を詰めるなどの対応が必要です。
北川邸では住んだ後にさらに断熱材を追加で敷くことによって、配管まわりなどの断熱欠損はなくなりました。
まとめ|高気密高断熱住宅を建てるために
気密性能を上げることで不要なスキマ風を防ぎ、断熱材の保温効果も高まるため、寒い真冬であっても室内では非常に快適に過ごすことが可能です。
また、今回の北川邸のように住み始めは気密性能悪い住宅でも、断熱気密リカバリーをすることによって、ある程度は寒い生活環境を改善することもできます。
■関連動画■
【注文住宅】施主に聞くリアルな家づくりの成功/失敗談&リカバリーで住み心地はどう変わる?
しかし、施工後のリカバリーは費用や時間も多くかかってしまい、補修できない箇所も発生してしまいますので、やはり施工時にしっかり工務店と相談しながら高気密高断熱住宅を建てることが大切です。
住宅性能や工務店選びについてしっかり勉強し、気密に詳しい工務店を選ぶことが快適な家づくりのポイントになります。
高気密高断熱住宅を建てる秘訣についてもっと学びたい方はこちら
【高気密高断熱の秘訣】家づくりで絶対に真似したい断熱気密のポイント