こんにちは、日本住環境 広報部(イエのサプリ編集部)です。
このブログでは良い家づくりに必要な情報を丁寧に解説していきます。
これから家を建てたいと考えている一般の方はもちろん、実際に家づくりに携わっている方にも「タメ」になる情報をお届けします。
家づくりをする際、土地や予算、依頼する工務店、外観、間取りなど決めることはたくさんあります。
これからずっと住む家ならこだわりのある理想的な家で、できる限り後悔がないように建てたいですよね。
家ができた後に後悔するポイントは人によって違いますが、内装や間取りなど目に見える部分の問題であれば、家具の配置やDIYなどで簡単に解消できることがほとんどです。
しかし、性能面に問題があると改修するのに多くの費用や時間がかかってしまい、その後もずっと心残りになってしまいます。
理想的なマイホームを手に入れるためには、家の性能について正しい知識を持つことが重要です。
今回のブログでは、家づくりを始める前に知っておきたい「家」に関する知識や工務店・ハウスメーカーの選び方について事例を交えながら紹介していきます。
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家づくり初心者が知らないと後悔する「よくある誤解」
普段「家」で生活していても、構造や使用される部材、性能などの細かいことについて知る機会はほとんどありません。
そのため、家について勉強し始めると驚くような事実が出てくることもあります。その中で誤った知識を持ってしまうことも珍しくありません。
ここでは家づくりを始める前に知っておきたい「家」に対するよくある誤解について紹介していきます。
ZEH住宅でも省エネな家になるとは限らない
エネルギー高騰や補助金制度を考慮してZEH住宅などの省エネ住宅を検討している人も多いと思います。
しかし、ZEH住宅だからといって必ずしも暖かく快適で、電気代が安くなるわけではありません。
ZEH住宅には断熱性能(Ua値)の基準があるものの気密性能に関する基準がないため、施工する方たちの技術によっては、気密性能が悪くスキマだらけの家になってしまう可能性もあります。
スキマがあるということは常時風が出入りし、間仕切壁を通って住宅内を巡っている状態です。
暖かい空気は間仕切壁を通って上へ押しあげられ、下には冷たい空気だけが溜まるような家になります。
出典:一般社団法人 木を活かす建築推進協議会|住宅省エネルギー技術講習テキスト全国(4~7地域)版
家に温度差ができると、結露が発生しやすくなりカビや腐朽菌の繁殖など様々な不具合が生じます。
ZEH住宅で建てたとしても高性能で省エネな家が建つかは、工務店やハウスメーカーの技術次第です。
高性能で省エネなZEH住宅をつくりたい人はこちら「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)でも省エネにならない?住宅をつくる5つのポイント」を参考にしてみてください。
断熱性能だけを上げても暖かくならない
家に断熱材をどの程度入れるかは地域ごとで基準が設けられており、冬でも暖かい家にしたい人は基準より多めに入れることもあります。
しかし、気密性能が悪い家では断熱材を何㎜重ねてもスキマ風が入りこむので、暖かい家にはなりません。
実際に気密性能が悪いとどの程度寒くなるのか比較した実験があります。
下の画像はボードとクロスを外した壁面の様子です。
左側は気密処理をされていない壁面で、右側が気密処理されている壁面になります。
スキマ風に色を付け外側からあててみると、気密処理をしていない方のコンセントボックスから外気が入りこんでいるのがわかります。
普段はスキマ風に色がついていないので気になりませんが、気密処理ができていない家では大量のスキマ風が入りこんでいるのです。
壁面の温度を比較すると、時間の経過とともに左右で大きく温度差が出ていることがわかります。
▲実験開始2分後の様子。まだ大きな温度差は見られない。
▲実験開始30分後の様子。左右で明確な差が出ている。
このようにスキマから入った外気が家を冷やしてしまうため、気密性能が悪いと断熱性能の意味がなくなってしまうのです。
また、家が暖まらないだけではなく、室内や壁内に水蒸気が留まることでカビやシロアリなどが発生し、家の劣化を早める原因にもなります。
家には、断熱性能の他に気密性能や防露性能といった基本性能が必要です。
出典:一般社団法人 木を活かす建築推進協議会|住宅省エネルギー技術講習テキスト全国(4~7地域)版
冬は暖かく夏は涼しい家を建てるには、断熱性能だけではなく気密性能や防露性能も一緒に高めていくことが重要になります。
高気密の基準は国で決まっていない
住宅展示会やオープンハウスの広告などで「高気密住宅」という言葉をよく目にするようになりました。
高気密住宅はスキマから風が入らないため、年間を通して室温を一定に保ち結露リスクを低減させるなど様々なメリットがあります。
ただ、注意してほしいのは高気密の基準が国で定まっていないことです。
気密性能は「C値(相当隙間面積)」で表され、0㎠/㎡に近いほどスキマの少ない家、要するに「高気密住宅」と判断されます。
イエのサプリ編集部では高気密の目安をC値1.0㎠/㎡以下と伝えていますが、工務店やハウスメーカーによって高気密とする数値はバラバラです。
イエのサプリ同様、C値1.0㎠/㎡以下を高気密として気密工事する工務店やハウスメーカーがある一方で、C値2.0㎠/㎡で高気密と言われるケースもあります。
ただ、C値が1.0㎠/㎡以下と1.0㎠/㎡以上では、実際のスキマの面積に大きな差がでてきます。
C値0.5㎠/㎡と比較すると スキマの大きさはC値2.0㎠/㎡で約4倍、C値3.0㎠/㎡では約6倍になります。
なので、高気密住宅という言葉を見ても、実際にC値がどの程度の
数値を指しているのかを確認することが重要です。
家づくり失敗談!気密性能の悪い注文住宅で起こる4つのこと
イエのサプリでよく耳にする家づくりの後悔は「家が寒い」ことです。
家が寒い大きな原因はやはり気密性能の悪さといえます。
ここでは家づくりの失敗談として、気密性能が悪く起きる4つのことについて実際の現場写真とあわせて紹介します。
イエのサプリに寄せられた後悔についてはこちら「【後悔まとめ】新築マイホームの後悔ポイント!視聴者怒りと悲しみのコメント6選(※YouTubeへ遷移します)」をご覧ください。
室内温度が外気温とほとんど同じ家になる
気密性能のよい家は、外気が入りこみにくいため冬でも夏でも室内温度が一定に保たれます。
一方、気密性能の悪い家では、常に外気が入りこむため室内温度と外気温がほとんど同じになってしまうことがあります。
実際に検証した宮崎県都城市にある戸建て住宅は、断熱等級4と基準値をクリアする断熱性能があったもののC値3.9㎠/㎡と気密性能が非常に悪い家でした。
この日、宮崎県都城市の気温は7.5℃。前日の24時までエアコンを付けてもらっていましたが、朝の寝室の温度を計測してみると、ベッドに近い床の温度は9.3℃でした。
壁と床の接合部分である巾木やコンセントボックスの周辺は7.7℃。外気温と0.2℃しか変わらない温度だったのです。
夜までエアコンを付けていても朝方に10℃以下を下回る家は珍しいわけではありません。
都道府県別でアンケート調査を行ったところ、長野県や大分県、滋賀県、佐賀県、宮崎県に10℃以下を下回る家が多いというアンケート結果がでました。
参考:weathernews|夜に最も寒い部屋で寝るのは佐賀県、朝1番寒い部屋で起きるのは長野県!
東北や北海道などの寒冷地域では気密を意識して家がつくられるため、温暖な地域の方が気密をあまり重視しない寒い家になってしまう傾向があります。
1日を通して常に暖かい家をつくるには、温暖地域でも気密性能を高めることが重要です。
小屋裏でカビや腐朽につながる結露が発生する
スキマの多い家で起こりやすいのが「結露」です。
結露とは、水蒸気を含んだ空気が冷やされることで、抱えきれなくなった水分が水に変わる現象です。
スキマが多い家では冬に暖められた空気が壁内に侵入し、外壁面側の冷やされた部分で結露します。
壁内を巡る外気は最終的に水蒸気含み小屋裏へ辿りつくため、スキマの多い家では天井の点検口を開けると画像のように結露水が溜まっていることもあります。
こうなってしまうと新築でも大きな改修工事が必要になることもあります。
小屋裏で結露させないためには「小屋裏換気」も重要です。
小屋裏換気については「天井・小屋裏の結露で家がカビる!?結露を放置するリスクと3つの対策」をご覧ください。
エアコンの効きが悪く電気代が高くなる
気密性能の良し悪しは、日々の電気代にも反映されます。
気密性能のいい家はスキマがないのでエアコンの効きがよく、家の広さにもよりますがエアコン1台で家中の冷暖房をまかなえます。
逆に気密性能の悪い家は常にスキマ風が入りこみ、外気温に近づいてしまうため、1室に1台エアコンが必要になったり常に強運転をしなければ心地よい温度を保てなくなったりします。
▲C値0.2㎠/㎡の家の窓を3㎜程度あけるとC値3.2㎠/㎡に。高気密に比べ、低気密住宅では窓が数㎝開いているのとほぼ同じ状態。
そのため月々の電気代も高くなります。
24時間換気の意味がなくシックハウスのリスクがあがる
シックハウス対策として新築する際に設置しなければいけない24時間換気ですが、気密性能の悪い家では正常に機能しません。
スキマ風が換気経路を乱し、計画通りの換気ができなくなってしまいます。
実際に給気と気密性能の関係を示す表があります。
例えば6畳の居室で100㎥/hを換気できる計画の場合、気密性能の悪いC値5.0㎠/㎡の家では17㎥/h程度しか給気口から入ってきません。
残りの83㎥/hはすべてスキマから給気されています。
このようなスキマからの給気にはいくつか問題点があり、具体的にはどこのスキマから給気されているかわからないため換気扇のすぐそばにスキマがある場合、部分的な換気になってしまうことや、スキマからの給気ではフィルターを通らないため、ホコリやカビなどを含んだ空気がそのまま室内に入り込んでしまうことが挙げられます。
※スキマ換気がダメな理由を詳しく知りたい方はこちら「気密不足によるスキマ風も結局新鮮空気じゃないの?」をご覧ください(※YouTubeへ遷移します)。
24時間換気が正常に機能しないと室内のニオイがこもってしまったり、壁の内外で結露してしまったりするなど様々な不具合が生じます。
実際に気密性能がC値3.3㎠/㎡と悪く、24時間換気も10年近くメンテナンスしていない家では、いたるところにカビが生えていました。
▲和室にいたっては、何もしていないのに結露で壁や床が濡れてしまっている
メンテナンスされていない換気扇はスイッチを付けてもまったく稼働せず、換気量測定をしてみると0㎥/hになる箇所もありました。
家には法律で定められた必要換気量があり、これを確保できないとシックハウス症候群の発症リスクを高めます。
設計上は必要換気量をとれていたものの、気密性能の悪さや24時間換気のメンテナンス不足などによって、実際の換気量が必要換気量の131㎥/hを大きく下回る72㎥/hほどしか確保できていませんでした。
結果的に築10年ほどで住んでいた方がシックハウス症候群になってしまい、家を手離すことになったのです。
気密性能が悪く換気がまともに機能していないと、長く住み続けるのが難しい家になります。
24時間換気はメンテナンスがしやすいかも考慮して決めよう
築10年でカビがいたるところに生えたのは、気密性能の悪さが大きな要因ですが、換気のメンテナンスを怠り換気が正常に機能していなかったことも大きく影響しています。
24時間換気システムのメンテナンス方法はメーカーによって異なり、工具不要なものからドライバーなど複数の工具が必要なものまで様々です。
中にはコネクターを外さなければメンテナンスできないものもあり、施主だけでは対応しにくいものもあります。
メンテナンスが難しいと汚れていても放置しやすくなってしまうため、24時間換気を選ぶ際は、工具不要かどうか・メンテナンスしやすいかにも注目して検討することをおすすめします。
【展示会に行く前に】後悔しやすい工務店・ハウスメーカーの選び方
これから展示会やオープンハウスに行き、依頼する工務店やハウスメーカーを選ぶ人も多いでしょう。
ただ、契約した後に「やっぱり別のところに頼めばよかった」と後悔する話もよく耳にします。
ここでは、後悔しやすい工務店やハウスメーカーの選び方について紹介します。
デザイン性だけで工務店・ハウスメーカーを選ぶ
長年住むのであれば、自分の好きな外観デザインをつくってくれるところや内装のおしゃれさで選びたくなってしまいますよね。
もちろんデザインを第1に家づくりをしたいのであれば、それで問題ありません。
しかし、耐久性や住んだ際の快適性、シックハウスにならないような安全性を第1に希望するのであれば、デザインの前にまず依頼する工務店やハウスメーカーが気密など家の基本性能に関してどのように考えているのかを確認してみてください。
営業マンとの相性やフィーリングで契約する
家は決して安いものではないので、信頼できる工務店やハウスメーカーに依頼したいですよね。
最初の窓口となる営業の方や担当の方との相性がピッタリで、親身に相談に乗ってくれたりすると、それだけで工務店やハウスメーカーを選んでしまう人もいます。
理想の家を建てるのに、信頼できる営業の方や担当の方と契約するのはよいことですが、営業の方や担当の方が持つ家の知識は人や会社によってバラバラです。
実際に家をつくるのは現場の人になるため、相性のよい営業の方となら高性能な家がつくれるというわけではないので注意してください。
工務店やハウスメーカーの知名度や規模だけで決める
大手のハウスメーカーや工務店では、長期的な保証や社会的な信用性から見ても安心ですよね。
ですが、会社の知名度や規模だけで決めてしまうのは危険です。
イエのサプリの丸裸企画でも紹介していますが、地域の工務店が高気密住宅を建てて、大手ハウスメーカーが低気密住宅を建てているケースもあります。
もちろん逆のケースもあり、どちらがいい家をつくれるかは施工をしてくれる大工や現場を見守る現場監督などの技術と知識次第です。
地域の工務店かハウスメーカーで迷っている人は、それぞれの実際の家の性能を数値で確認して決めるようにしましょう。
工務店・ハウスメーカーと契約する前にしておく2つのこと
希望する工務店やハウスメーカーが見つかった後、契約する前に必ず行なってほしい2つのことがあります。
気密性能に関する質問と書面上での契約
契約する前にまず気密について2つの質問をしてみてください。
どちらも約束できるところであれば、気密に関して気をつかっている工務店と判断できます。
ただし、実際の工事を別の会社が対応する場合は注意してください。
営業の方が契約のために「できます」といったものの、工事する側はその約束を知らなかったり、ほとんど気密工事をしたことがなく目標数値を達成できないというトラブルもあります。
必要であれば実際に工事する会社の現場監督などに営業の方からC値について確認してもらったり、契約時に同席してもらうようにしましょう。
C値の目標数値を約束した場合は、約束したことを必ず書面上に記載してください。
書面として残っていれば、工務店やハウスメーカー側に改修を求めることができます。
構造見学会への参加
工務店やハウスメーカーを選ぶ際、展示場で実物を見たり実際にできあがった家の資料などをもらったりすると思いますが、それだけで決めるのではなく、一度構造見学会に行き断熱気密がどのように施工されているかを確認しましょう。
構造見学会では建てている最中の現場を見学できるので、気密層や断熱層が完成したタイミングの現場を確認してみてください。
見てほしいポイントは多くありますが、断熱気密に関してはシートとシートの間などをしっかりテープで連続するように処理されているかが重要です。
途切れてしまうとそこから空気が入ってしまうため、気密性能はどんどん悪くなっていきます。
どこを見ればいいのか詳しくは以下のブログを参考にしてみてください。
NJKブログ:構造見学会では何をする?見るべき4つのポイントと参加するメリット
まとめ|楽しい家づくりをするために
家づくりではこだわればこだわるほど、勉強すればするほど迷ってしまう事もあります。
日常生活と並行して工務店やハウスメーカーを選んだり、細かい部分を決めたりしないといけないため「マイホームブルー」なんて造語ができるほど家づくりで疲れてしまう人もいます。
大きな買い物になるため、失敗や後悔しないよう慎重になってしまうと思いますが、初めての家づくりだと100%理想通りにならないこともあります。
家づくりに疲れや負担を感じるようであれば、まず家ができたら家族でどのように生活したいのか、何がしたいのかをぜひ家族内で話し合ってみてください。きっと前向きに家づくりを楽しめるはずです。
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5000万円で購入した待望の新築一軒家!でも、住んでみると…【Q&A】