ローコスト住宅が寒い原因とは?第1種換気を低気密住宅に採用するリスクNJK BLOG

2023.05.23
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ローコスト住宅が寒い原因とは?第1種換気を低気密住宅に採用するリスク

【大手ハウスメーカー】手抜き施工の実態丸裸


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こんにちは、日本住環境 広報部(イエのサプリ編集部)です。
このブログでは良い家づくりに必要な情報を丁寧に解説していきます。
これから家を建てたいと考えている一般の方はもちろん、実際に家づくりに携わっている方にも「タメ」になる情報をお届けします。




ローコスト住宅はコストが安い分、最低限の断熱性能しか入っていなかったり気密施工が不十分だったりすることがあります。

そのため、あらかじめ性能について工務店と取り決めを交わしておかないと、寒かったり大量の結露が発生したりと不具合の多い家になってしまうでしょう。

また、少しでも暖かい家をつくるために熱交換できる第1種換気を採用する人も多くいますが、性能の悪い家では寒さの原因になることもあります。

今回のNJKブログでは、ローコスト住宅が寒くなる原因や低気密住宅に第1種換気を採用したときのリスク、低コストで暖かい家をつくる方法などについて、実際のローコスト住宅の調査結果とあわせて紹介していきます。


また、建てた後にできるリカバリー方法も紹介するので、リカバリーしたい人は工務店と相談する際の参考にしてみてください。

※イエのサプリ編集部では、リカバリーを推奨しているわけではありません。リカバリーをする際は専門家に相談の元、自己責任で実施してください。


目次  [表示させる]
1.ローコスト住宅が寒い原因
 1-1.気密施工の知識・技術不足による気密性能の悪さ
 1-2.断熱材の施工不備による断熱欠損
 1-3.必要換気量を大きく上回る過換気
 1-4. 防火用のボードにできた配線用の穴
2.ローコスト住宅に第1種換気を採用するリスク
3.ローコスト住宅で暖かい家は本当につくれる?
4.ローコスト住宅を建てて後悔しないためにすべき4つのこと
 4-1.構造見学会に参加して自分の目で施工などを確認する
 4-2.断熱性能を断熱等級6もしくはG2以上にしてもらう
 4-3.C値1.0㎠/㎡以下を約束する
 4-4.必要ないと言われても樹脂サッシを入れてもらう
5.【場所別】ローコスト住宅に住んでみて寒いときのリカバリー方法
 5-1.お風呂場・脱衣所が寒い場合
 5-2.キッチンが寒い場合
 5-3.ダウンライトや天井付近から冷気を感じる場合
 5-4.玄関が寒い場合
6.まとめ

ーコスト住宅が寒い原因

ローコスト住宅が寒い原因について、ローコスト住宅であるP邸の調査結果とともに紹介していきます。

【P邸の住宅性能】

  • 竣工日:2021年の冬
  • 工法:軸組在来工法
  • 坪数:30坪
  • 24時間換気:第1種ダクト式換気
  • C値:2.5㎠/㎡
※C値は0㎠/㎡に近づくほどスキマがなく、高気密な家になる。

密施工の知識・技術不足による気密性能の悪さ

気密への知識や施工経験は工務店によってバラつきがあります。

中でもローコスト住宅を建てる工務店では、安さを重視する上で必要な気密部材を省いてしまったり、気密施工にこだわりがないことも珍しくありません。

P邸でフォグ試験(床下から煙を出してスキマがあるか調べる試験)を実施したところ、画像のように白く曇るのが目視できるほどのスキマ風が発生していました。

フォグ試験

P邸は気密性能がC値2.5㎠/㎡と悪く、床下や天井などに気密断熱欠損している部分が多く見つかりました。

ローコスト住宅を建てる場合、工務店が気密性能をどの程度気にしているか確認する必要があります。

熱材の施工不備による断熱欠損

家の断熱性能は年々よくなっており、近年ではHEAT20断熱等級6、7といった新しい基準も出てきました。

しかし、ローコスト住宅ではコストを抑えるために最低限の厚みしか断熱材を入れていないケースや、施工が雑で断熱材にスキマができてしまっているケースもあります。

本来であれば柱と柱の間にスキマなく断熱材を詰め込んでいかなくてはいけないところに、P邸では下の画像のようなスキマができていました。

小屋裏の断熱欠損

このような断熱欠損があると欠損部分から熱が出入りしてしまうため、高性能な断熱材を入れたとしても本来の性能が発揮されません

元々断熱性能の悪い家では更に性能が落ちてしまい、外気温に大きく左右される家になってしまいます。

要換気量を大きく上回る過換気

戸建て住宅では1時間あたり家の容積の0.5回以上の換気が必要ですが、この回数を大幅に超えてしまうと過換気になります。

必要以上に空気が出入りすると空気の動き(気流)を肌で感じられるようになり、家の中に風が吹いているような寒さを感じてしまうでしょう。

P邸では第1種換気の他にパイプファンが全部で5台設置されており、排気量の合計が334㎥/h

しかし、給気口からの給気量は136㎥/hしかなく、給排気のバランスが大きく崩れていることがわかります。

換気量測定

換気回数に直してみると、必要換気回数0.5回/hに対しP邸は約1.4回/h

要するに、1時間で家の容積1つ分以上換気していることになり、かなり過換気な家ということがわかります。

家を建てる際に、必ず必要換気量を算出して換気設計が行われるので、

  • どのくらいの換気量になるのか
  • どこに給排気口を設置するのか
  • 換気経路はどうなっているのか

この3点については、工務店任せにせず施工前に確かめるようにしましょう。

火用のボードにできた配線用の穴

省令準耐火の家では防火用のボードが壁内にありすべて立ち上がっていますが、配線がはしる部分の気密シートにスキマがあります。

配線が通った後に気密テープなどで塞がっていればいいのですが、塞がっていないと風の出入口になってしまいます

1つ1つが小さい穴ですが、配線の分だけあいてしまっているので、全部合わせると大きな穴があいているのと変わりありません。

改修工事をするには壁を剥がさないといけないので、省令準耐火の家を建てるときに注意したいポイントの1つです。

ーコスト住宅に第1種換気を採用するリスク

第1種熱交換型換気は8割前後の熱をリターンできるため、熱を排出せず暖かい空気を戻せるのがメリットですが、本体の設置されている場所が寒いと冷たい風が居室へとリターンされてしまいます。

例えばこのP邸ですが、本体が設置されている洗面所の室温は15~10℃

仮に外から取り入れた空気が0℃で10℃の排気から8割で熱交換した場合、8℃の空気がキッチンやリビングなどにリターンされることになります。

第1種換気を設置するリスク デメリット

強制的に冷気が送られてくるため、エアコンを稼働させても断熱材を付加しても寒さを改善できない可能性があります。

ローコスト住宅で第1種熱交換型換気を採用したいのであれば、より気密性能を重視していくことがポイントです。

第1種換気を設置する際の注意については下の動画「熱交換換気いれたのに家が寒い?設置場所と使用上の注意点!【Q&A】」を参考にしてみてください。

ーコスト住宅で暖かい家は本当につくれる?

ローコスト住宅=性能が低いと思われがちですが、工務店との詳細な打合せやオプションの利用で暖かい家をつくることも可能です。

実際に地元の工務店で、C値0.4㎠/㎡のUa値が0.48(HEAT20 G1とG2の間レベル)の高気密高断熱のローコスト住宅を建てた施主もいます。

オプションを利用しているため標準仕様のローコスト住宅よりは割高ですが、そこにこだわるか・こだわらないかで室内の温熱環境が大きく変わります。

実際にどのくらい変わるのか、熱画像カメラで撮影した2つの画像を用意しました。

熱画像 高気密の家の温熱環境

左の熱画像はC値2.5㎠/㎡の家です。

外気温が8℃の時、お風呂場の温度は最高でも16℃しかなく、床面に至っては9.8℃と外気温と2℃しか変わらない温度になっています。

一方、右の熱画像はC値0.4㎠/㎡(撮影時はC値0.6㎠/㎡)の家です。

撮影時の外気温は左よりも低い5℃でしたが、最高で20.3℃となっており寒いところでも16.2℃と左の最高温度と同じくらいありました。

家の大きさの違いや細かい部分に違いがありますが、性能の違いで家の快適さが大きく変わります。

C値0.4㎠/㎡のUa値0.48になるほどの高気密高断熱な家をローコストでつくるには、工務店に任せきりにするのではなく、住宅性能について自分でも一通り勉強しておくことが必要です。

詳しくは「ローコスト住宅は本当に後悔する?住んでみた施主の体験談と家づくりの秘訣」を参考にしてみてください。

ーコスト住宅を建てて後悔しないためにすべき4つのこと

外観や立地、高気密高断熱というセールストークを聞いて購入したものの、住んでみてから後悔したという話もよく耳にします。

【ローコスト住宅によくある後悔事例】

  • 住んでみると家が寒い
  • 窓際がひどく寒い
  • 夏になると2階が暑い
  • コンセントなどから冷気を感じる
  • 経年とともにクロスの汚れや剥がれが気になる
  • 暮らし方と間取りが合わず使勝手が悪い
  • 外観が安っぽくて恥ずかしい など…

間取りはDIYやリフォームで改善することはできますし、外観もある程度は変えられます。

ただ、性能面に関しては竣工後に改善できないものも多いため、購入前に自分の目で確かめたり工務店に確認しておくことが重要です。

ここでは、建てる前にすべき4つのことについて紹介します。

造見学会に参加して自分の目で施工などを確認する

性能の高い部材を使用していても施工が悪いと性能がまったく発揮されないので、工務店と契約する前に構造見学会へ参加してどのような施工をしているのか自分の目で確かめましょう

構造見学会とは実際に建築途中の家へ行き、以下のようなものがどのように施工されているのかを説明してもらえる会です。

  • 床・壁・天井の気密断熱施工
  • 外壁の防水処理と通気層
  • シロアリ対策
  • 現場の状態 など

構造見学会についてもっと知りたい、どのような部分を見ていけばいいのか詳しく知りたい人は「構造見学会では何をする?見るべき4つのポイントと参加するメリット」をご覧ください。

熱性能を断熱等級6もしくはG2以上にしてもらう

日本では家にどの程度の断熱材が必要か8つの地域区分と各基準に合わせてUa値(断熱性能)が決められています。

同じ地域でも基準によってUa値が変わってくるため、暖かい家をつくりたい人は断熱等級6もしくは7、HEAT20のG2もしくはG3を目指してみてください。


1・2地域

3地域

4地域

5地域

6・7地域

H28年
省エネ基準

0.46

0.56

0.75

0.87

ZEH基準

0.4

0.5

0.6

G1

0.34

0.38

0.46

0.48

0.56

G2

0.28

0.34

0.46

G3

0.20

0.23

0.26

等級4

0.46

0.56

0.75

0.87

等級5

0.4

0.5

0.6

等級6

0.28

0.34

0.46

等級7

0.20

0.23

0.26

※8地域は沖縄

ローコスト住宅では断熱等級4 やZEH基準を標準仕様としていることも多く、暖かい家をつくるには断熱性能が不十分です。

断熱等級6やHEAT20のG2以上を標準仕様にしていたり、断熱材の追加に対応してもらえるような工務店に依頼することをおすすめします。

C値1.0㎠/㎡以下を約束する

気密は換気や断熱とも密接に関わっているため、家の気密性能の良し悪しが生活の快適さや家の長持ちにも影響を与えます。

そのため、家を建てる際はC値1.0㎠/㎡を下回るように書面上で契約しましょう。

口頭ではなく書面上で契約すれば、C値が悪かったときに工務店側に改修工事を求めることができます。

また、気密は実際に測定してみないと数値がわからないため、気密測定を行うこともセットで契約するようにしてください。

要ないと言われても樹脂サッシを入れてもらう

暖かい家をつくる上で欠かせないのは、熱の出入りが最も大きい窓の性能を高めることです

しかし、ローコスト住宅ではコストを抑えるためにアルミ樹脂複合サッシを標準仕様にしていることが多く、中には1番性能の低いアルミサッシを使っている工務店もあります。

できる限り樹脂サッシへの仕様変更をおすすめしますが、関東や関東以西の地域では「北ほど寒くならないから樹脂サッシなんて必要ない。アルミ樹脂複合サッシで十分」と工務店に言われることもあるようです。

P邸も着工する前に工務店から「アルミ樹脂複合サッシで十分」と何度も言われたようですが、施主は意思を曲げず家中の窓に樹脂サッシを採用しました。

費用面ですべての窓に樹脂サッシの採用が難しいこともあると思いますが、そういった場合には内窓を付けるなどして性能を上げていくことが可能です。

場所別】ローコスト住宅に住んでみて寒いときのリカバリー方法

ローコスト住宅に住んでみて寒いと感じた場合、リカバリーをするのも1つの方法です。

ここでは場所ごとに原因となる場所やリカバリーのポイントについて紹介します。

なおリカバリーする際は自己判断で行わず、必ず工務店に相談した上で行ってください。

風呂場・脱衣所が寒い場合

お風呂場や脱衣所が寒いのは、配管や配線まわりの気密層が連続していなかったり断熱欠損が起きていたりすることが原因です。

また、窓の付いている家では窓性能が悪いことや、画像のように床と壁の取り合いなどで気密断熱層が途切れてしまっていることも原因として考えられます。

お風呂・脱衣所の温熱環境

お風呂場や脱衣所を暖かくするには、まず床下に潜って断熱欠損になっている部分には断熱材を詰め込み、気密テープや1液の発泡ウレタンで気密層を連続させる処置が必要です。

また、お風呂場だけ基礎断熱にしている家でよくあるのは、人通口が開いたままになっていて塞がれていないケースです。

人通口とは作業する際に人が通るための出入口で、開いたままになっていると床断熱側から外気が入り込みスキマを通って浴室に流れたり、壁を伝って点検口から流れ込んだりしてきます。

人通口の断熱気密ライン

ここを断熱材で塞ぎ気密テープなどで気密ラインを連続させるだけで、お風呂場や脱衣所の寒さを大幅に改善できます。

ッチンが寒い場合

キッチンは熱を取り扱うため空気が暖められて上昇しやすく、床下の配管や配線にスキマがあると圧力差でどんどんスキマ風が足元から入り込んでしまいます。

床下の断熱気密欠損

床との間にできたスキマを気密テープや1液の発泡ウレタンで埋めていくことが1番の対策です。

もし断熱材が欠けている場合は、新しく断熱材を詰め込むなど断熱欠損の対策も必要になります。

ウンライトや天井付近から冷気を感じる場合

天井付近から冷気を感じる場合、ダウンライトまわりにしっかりと断熱材が敷き込まれてなく、断熱欠損している可能性があります。

天井断熱

ダウンライトまわりの断熱材は、カバーの上から敷いたり吹き込んだりしていきますが、上から乗せただけだと天井と断熱材の間にスキマができてしまいます

一度上に敷き込んだ断熱材を外し、断熱ボックスを設置するか断熱材を吹き込んで、断熱層が途切れないような改修が必要です。

ただし、電気工事が関係してきて危険ですので、必ず工務店へ相談しましょう

また、寒い原因がダウンライトの断熱施工以外にもあるかもしれません。

例えば、画像のようにダクトの上に断熱材が載っていてスキマができていたり、断熱材が適当に詰められていて断熱材と断熱材の間にスキマができていたりすることもあります。

断熱欠損

気密断熱は連続していないと意味がないため、しっかり詰め直して気密テープで連続させていくことが必要です。

関が寒い場合

ドアは熱の出入りが大きい開口部になるので、玄関が寒い場合ドアの断熱性能の低さに問題があるかもしれません。

断熱材をドアに張っていき断熱性能を上げていくことがポイントです。

また、土間が冷えていたり足元が寒い玄関では、土間まわりのパッキンに原因があるかもしれません。

通常、玄関の土間には気密パッキンを使用しますが、中には通気パッキンが入っていることもあります。

P邸も気密パッキンではなく通気パッキンが使用されており、非常に寒く風を感じる玄関となっていました。

玄関の断熱気密欠損

竣工後は、通気パッキンから気密パッキンに替えることができないため、1液の発泡ウレタンなどでパッキンの通気孔を塞いでいくことになります。

なおパッキンが気密なのか通気なのかを判断するポイントは、覗き込んだときに向こう側の光が見えるかどうかです。

通気パッキン・気密パッキン見分けかた

通気パッキンの場合、風を通すための穴があいており向こう側の光が見えます。

とめ

ローコスト住宅だからといって寒い家ができたり後悔するとは限りません。

高気密高断熱な家をつくるポイントを押さえ、工務店と細かく打合せしていけばコストを抑えたまま高気密高断熱の家をつくることできます。

安いから性能が悪くても仕方ないとあきらめず、理想の家を目指しましょう。

 

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