築半年でフルリノベした新築物件の気密性能を徹底調査!高気密な家を建てる際に必要なものとはNJK BLOG

2025.07.02
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築半年でフルリノベした新築物件の気密性能を徹底調査!高気密な家を建てる際に必要なものとは

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こんにちは、日本住環境 イエのサプリ編集部です。
このブログでは良い家づくりに必要な情報を丁寧に解説していきます。
これから家を建てたいと考えている一般の方はもちろん、実際に家づくりに携わっている方にも「タメ」になる情報をお届けします。

 

引き渡された新築の納まりや住宅性能が契約内容と異なっていた場合、どうすればよいのでしょうか。 「そういうものか」と自分を納得させて住み続ける方も多いと思います。

今回紹介するのは、築半年でフルリノベーション級の修繕工事を行ったD邸です。

新築であっても契約内容と異なる欠陥住宅であれば契約先のハウスメーカーや工務店に相談することで修繕工事が可能であること、そして徹底したリノベーションでどの程度住宅性能が向上するかについて、調査結果から紹介します。

【D邸の住宅性能】

地域

長野県の3地域

※札幌などと同じレベルの寒冷地

築年数

2年(調査当時)

工法

木造軸組後方

断熱

屋根断熱、壁充填断熱、床断熱

24時間換気

ダクト式第1種換気(全熱交換型)

断熱等級

断熱等級5

 

 
目次  [表示させる]

 

大手ハウスメーカーで建てた家で見つかった重大な欠陥とは

D邸は2023年9月に竣工した新築の注文住宅ですが、たまたま覗いた小屋裏で以下のような欠陥を発見しました。

  • 24時間換気のダクトが本体につながっていないものがあった
  • 省令準耐火構造で契約したはずなのに、省令準耐火になっていない(石膏ボードが横架材まで張り上げられていない)

これ以外にも建築中から部分的な断熱気密欠損や外壁の防水問題への疑いが気になっていたという施主のDさん。契約したハウスメーカーに相談したところ、契約内容との相違が確認され、ハウスメーカー側の負担でフルリノベーションに近い大規模修繕工事を行うことになりました。

今回は、「プロに任せきり」ではなく家の住宅性能について勉強し、知識を身につけておく重要性がわかる事例です。

【衝撃】フルリノベで住宅性能はこのぐらい上がる

D邸で行われた修繕工事では、ボードや外壁、気密シート、断熱欠損している部分の断熱材を剥がし、3〜4か月かけて行われました。施主のDさんは仕事の都合の関係もありますが、フルリノベ中もD邸に住んでいたようです。

ここでは、フルリノベでどの程度住宅性能が向上したのかについて紹介します。

スキマを塞ぎ気密性能(C値)が0.18㎠/㎡に

D邸では施主のDさんがサーモグラフィーカメラを使い、自分の目で確認しながら徹底してスキマを塞いでいきました。

その結果、家のC値は中間気密測定でC値=0.18㎠/㎡という超高気密住宅になりました。正しく気密施工がされていたようで、イエのサプリが調査した時(フルリノベから約1年後)でもC値=0.25㎠/㎡と高気密を維持できています。

C値=0.25㎠/㎡と高気密

C値が良いだけでなく、202㎡の家に対してaA=51㎠(スキマの総面積)、n値=1.19(2に近づくほど致命的な穴ができていると言われる)であり、スキマのない家であることが証明されました。

また、実際に家のスキマがないか煙を使ったフォグ試験を行ったところ、洗濯機の下の配管から煙が確認できました。

スキマ風

原因としては、洗濯機の配管に少しスキマがあったようです。ただし、他に煙が大量に出てくるような箇所はなく、n値も良いことからスキマがほとんどない家と言えます。

家族が増えても電気代約3万円の削減に成功

気密性能を高めたことでまず体感が劇的に変わったというDさん。修繕前は思ったほど暖かさを感じられなかったようですが、修繕後は玄関周りや洗面脱衣所でも暖かさを感じられるようになったといいます。

またエアコンの効きも良くなり、体感温度だけでなく実際に電気代という形でも気密性能を実感できたようです。

D邸では、202㎡の家に4人家族で住んでいた新築時(2022年10月〜12月)の電気代が約5万円だったのに対し、リノベが終わった後(2023年10月〜12月)の電気代は約2万8000円で、約2万2000円の減額となりました。

しかも、リノベが終わった後に親との同居を始め、5人家族となったにもかかわらず、月の電気使用量は200〜250kWhほど減ったそうです。

高気密住宅で電気代が節約できる理由として、換気以外の外気が家の中に侵入しにくくなり、エアコン1台で家中の室温を保てることが挙げられます。

実際にD邸を調査した時、2階のエアコンは止まっており、外気温は4℃前後しかありませんでしたが、寒くなりやすい洗面所の最低温度は15℃で非常に温かいという結果になりました。

最低温度は15℃

※気密性能の悪い家では、10℃を下回ることがほとんどです。

また、気密性が高いとエアコンを高い温度に設定しなくても家全体を温められるため、結果的に消費電力を抑えられます。

断熱等級5でも最低気温が10℃を超える

断熱等級は現在、5よりも断熱性能の高い6や7が新設されており、等級5だとUa値※は0.4で、等級6の0.28と比較すると決して高断熱とは言えません。

ただし、D邸では気密性能が高いため、北向きの洗面所やスキマ風が入り込みやすい分電盤周辺でも温かさを保っています。

北側の洗面所最低温度21.9℃

寒くなりがちな風呂場やトイレでも最低気温は16℃前後と、非常に温かいことが分かります。

断熱性能を高めても気密性能が伴わない場合、断熱材本来の性能が発揮されなかったり、壁の中で結露してカビが生えたりすることがあります。「家を温かくする=断熱等級を上げる」ではなく、気密性能も一緒に高めていきましょう。

※Ua値(外皮平均熱貫流率)とは住宅の断熱性能を示す数値で、値が小さいほど断熱性能は高くなります。

▼断熱性能が高いのに気密性能が悪い家の例▼

一種24時間換気の熱交換率が90%

24時間換気が正しく稼働するためには、気密性能が重要です。気密性能の悪い家では必要換気量(0.5回/h)に達しない家も多く、カビやホコリを含んだスキマ風が家中を巡ることになります。

D邸の24時間換気を調査したところ、合計換気量は280㎥/h(0.58回/h)で、必要換気量をクリアしていました。

合計換気量は280㎥/h

さらに、熱交換率を調査したところ、D邸では79%〜90%とかなり高い交換率を誇る結果となりました。

90%の熱交換率ダクト内

今回は、必要換気量以外にも二酸化炭素濃度についても調査しました。室内の二酸化炭素濃度の基準は1000ppm以下で、これを上回る部屋に住み続けると体調不良や倦怠感など人体への悪影響を及ぼす可能性があります。

D邸で約1か月調査したところリビングでは時折1000ppmを超える時がありましたが、換気が正常に稼働しているため、おおむね問題ないことが分かります。

二酸化炭素濃度

※2000ppmを超えた部分は、一時的にガスストーブを使っていたとのことです。高気密住宅でのガスストーブの使用は、空気を汚染し二酸化炭素濃度を一気に上げてしまうため、おすすめの暖房方式とは言えません。

D邸ではダクト内も清潔に保たれており、計画通りの換気・熱交換ができていることが分かります。

ルリノベ級の修繕工事で高気密住宅を作るためにしたこと

フルリノベをしたからといって、高気密住宅を作れるとは限りません。D邸では、修繕工事の際に施主であるDさんが積極的に関わってきたという経緯があります。

ここでは、どのように関わったのかについて詳しく解説します。

サーモグラフィーカメラで断熱欠損やスキマをチェック

施主のDさんは新築の施工途中で住宅性能を勉強し、寒い部分がないかをチェックするため自費でサーモグラフィーカメラを購入しました。

サーモグラフィーカメラ

毎日修繕工事が終わった後にサーモグラフィーカメラで断熱欠損がないかをチェックし、欠損部分については翌日に現場監督へ相談していたそうです。

特に吹き付けの発泡ウレタンを採用している場合、見ただけでは断熱欠損に気づかないケースもあります。

断熱欠損

サーモグラフィーカメラ等で目に見えない断熱気密欠損をチェックすることが、高気密住宅を作る鍵となります。

▼チェックするポイントはここ▼

住宅性能に関する正しい情報の収集

イエのサプリ編集部にも「住宅性能に関する知識が全くないまま家を作ってしまった」「営業に勧められるままに家を作ってしまった」と後悔する声も多く届いています。

住宅性能に関する正しい情報を集め身に付けることで、「この施工で本当に合っているのか?」と疑問を持つことができます。

Dさんも施工途中に住宅性能を勉強していく中で、換気扇から全く空気が流れてこないことや、省令準耐火構造の条件を満たせていないことに気付きました。

省令準耐火構造

現在、ネット上には住宅性能に関する正しい情報も多く投稿されていますので、家を建てる前にチェックしましょう。

イエのサプリでも、「日本の家を暖かく」をテーマに気密など住宅性能についてさまざまな角度から情報を発信しています。

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住宅の健康情報 イエのサプリ

気になった部分について現場監督への相談

家づくりの中で、気になった部分は我慢せずに現場監督や契約元のハウスメーカーもしくは工務店に相談することも重要だとDさんは言います。

実際にDさんも、施工内容で気になった部分はすべて現場監督に相談したそうです。

場合によっては嫌な顔をされることもあるかもしれませんが、家は高価な買い物ですし、そこに住む家族の体調にも大きく影響するので、気になる部分はすべて解消しましょう。

まとめ

今回は契約時に約束した納まりが、実際に建てられた家に反映されていないという稀な欠陥住宅事例を紹介しました。

このように契約内容と納まり等が異なる場合、規模の程度は変わりますが修繕工事をしてもらえる可能性もありますので、我慢せずに契約先の会社に相談してみましょう。

その際、大事になるのは住まいに関する正しい知識です。施主のDさんもイエのサプリの動画を見ていたおかげで、違和感に気づくことができました。

プロだから完璧な施工になるとは限らないため、最低限の知識を身につけることが高性能で快適な長持ち住宅を作る秘訣です。

イエのサプリでは高断熱高気密の知識を中心に、施工の良し悪しもご紹介していますので、ぜひ他のブログも参考にしてみて下さい。

 

気密性能が高い施工について学びたい方はこちら
【高気密高断熱の秘訣】家づくりで絶対に真似したい断熱気密のポイント
 



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