【家づくり入門】住宅の気密性能を業界25年のプロが解説【セミナー動画】
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こんにちは、日本住環境 広報部(イエのサプリ編集部)です。
このブログでは良い家づくりに必要な情報を丁寧に解説していきます。
これから家を建てたいと考えている一般の方はもちろん、実際に家づくりに携わっている方にも「タメ」になる情報をお届けします。
初めての家づくりでは間取りや設備など決めることが多く、断熱や換気などの性能については工務店やハウスメーカーのすすめるままに決めてしまう方がほとんどです。
しかし、すすめられた性能で家をつくってしまうと「住んでみたら寒い」「結露がひどい」と後悔するケースもあります。
今回のNJKブログでは、家づくりで失敗や後悔しないためにデザインよりも必要な住宅性能について紹介します。
目次 [表示させる]
家づくりで失敗・後悔しないために必要な5つの要素
性能面から見る理想の家は、真冬でも真夏でも常に室温が均一に保たれ、正しく設計された24時間換気によって室内の二酸化炭素濃度が一定であることです。
このような家をつくるため、イエのサプリでは満たすべき5つの要素を提唱しています。

中でも「気密」は外気の侵入を防ぎ、換気や冷暖房の設備を正常に機能させ、家の劣化につながる結露を発生させない効果があるため非常に重要な性能といえます。
逆に言えば、断熱性能を高めたりスペックの良いエアコンを設置しても気密性能が悪くスキマ風の多い家では、本来の性能を発揮できません。また、室内と壁の間に温度差ができ、結露しやすい家になってしまいます。
家づくりでは高気密住宅を目指すべきですが、営業側から気密について詳しく説明されたりおすすめされたりするのはまれです。なので、住んでから後悔しないためにも自分達で正しい知識を身に着ける必要があります。
デザインより重視すべき気密性能(C値)とは
ここでは、気密性能を判断する際に重要になるC値やC値の目安を紹介します。
気密性能(C値)とは
気密性能は「C値」で表すことができ、家の中にどの程度スキマがあるかを意味します。

C値は家中のスキマの合計を床面積で割った数字で、0㎠/㎡に近づくほどスキマのない気密性の高い家と言えます。
高気密住宅といえるC値の目安
イエのサプリではC値=0.5㎠/㎡を目標に、C値=1.0㎠/㎡以下になるような家づくりを推奨しています。

家づくりの際に、営業から「C値は1.0㎠/㎡以下もいらない」と言われることもありますが、この数値は世界基準で見ると決して高い水準ではありません。世界には気密性能をC値=0.5㎠/㎡以下にするよう定めている国もあります。

日本ではC値に関する規定がないため何の取り決めもしないまま依頼してしまうと、高額な費用を支払ったのにC値=2.0㎠/㎡以上のスキマだらけの家ができあがることもあり得ます。
なので、家づくりを始める際は、相談しているハウスメーカーや工務店がC値=1.0㎠/㎡以下の家づくりをしているかしっかりチェックしましょう。
【検証】C値=2.0㎠/㎡前後の家はどのくらい寒い?
ここではC値=2.0㎠/㎡前後の気密性能の悪い家がどのくらい寒いのか、どの程度のスキマ風が入ってきてしまうのかを実際の検証結果とともに紹介します。
洗面所の温度が6℃の家

千葉県の住宅で気密性能などを調査した時の結果です。
リビングの室温は18℃~19℃でしたが、洗面所の壁の温度は最高でも8~10℃しかなく、最も冷たい部分では6℃とリビングの室温と比較して12℃近くの温度差が発生していることがわかります。
【関連記事】
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常に窓が30㎜開いている家

こちらは、C値=0.2㎠/㎡の高気密住宅をC値=2.0㎠/㎡以上の低気密住宅にする場合、どの程度のスキマが必要かを調査した時の画像です。
C値=2.3㎠/㎡の家を作るには窓を30㎜ほど開ける必要があり、気密性能の悪い家では常にこのくらいのスキマが開いていると考えられます。
初めての家づくりで高気密住宅を作るポイント
初めての家づくりで高気密住宅を作るには、以下のポイントをチェックしましょう。
- 中間気密測定・完成気密測定でC値をチェックする
- 家のキワにスキマがないかチェックする
- C値とあわせてn値やACHもチェックする
ポイントについて詳しく解説します。
中間気密測定・完成気密測定でC値をチェックする
C値は気密測定によって算出されますが、この気密測定には「中間気密測定」と「完成気密測定」があり、2つには以下のような違いがあります。
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中間気密測定
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完成気密測定
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測定のタイミング
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断熱気密層が完成した時
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住宅が完成し入居する前
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ポイント
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・クロスやボードがないので、本来のC値が見れる
・気密欠損の正確な位置を特定しやすく、修理しやすい
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・最終的なC値が見れる
・中間測定から気密層に不具合が起きていないか確認できる
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ハウスメーカーや工務店によって、気密測定の対応が異なります。契約前に、中間気密測定と完成気密測定を二回してくれるか、C値はどのくらいを目指すかを書類上で約束しておくことが重要です。
【関連記事】
気密測定の方法を徹底解説!具体的な手順と流れ
家のキワにスキマがないかチェックする
コンセントやスイッチ部分はスキマができやすい場所ですが、それ以上に巾木や天井と壁の取り合いなど家のキワ(青いライン部分)にスキマができやすいので、しっかりと気密処置されているかをチェックしましょう。
ハウスメーカーや工務店の中には、「クロスで気密が取れる」と言うところもありますが、クロスは仕上げ材であり気密部材ではありません。しっかり気密処理されないままクロスやボードなどの仕上げ材を張られてしまうと、施工直後は一定の気密性能が出ても経年劣化と共に大きなスキマになるので注意しましょう。

スキマになりやすい家のキワをどのように施工しているのかチェックしたい人は、そのハウスメーカーや工務店の構造見学会に参加することをおすすめします。
【関連記事】構造見学会へ参加しよう!【壁】から良い工務店を見抜くポイントを徹底解説
C値とあわせてn値やACHもチェックする
家の気密性能を判断する際、C値と同じくらい重要なのがn値やACHという数値です。
n値は気密測定の際にレシートに記載されていて、C値だけではわからない致命的な穴(気密欠損)の有無を1.0から2.0の間の数値で表してくれます。

1.0に近づくほど穴は小さく均一で、1.5から2.0の間になると致命的になり得る大きな穴が家のどこかに開いていることを意味します。
C値が=1.0㎠/㎡以下の家でも、n値が1.5から2.0の間を表示している場合には、家のどこかに大きな穴ができているので探し出してしっかり塞がなければいけません。大きな穴をそのままにしておくと大量の外気が入り込み、C値の良い家でも結露が発生したりエアコンの効きが悪い家になってしまいます。
ACHは1時間当たりの換気回数を意味し、強風時(50Pa)にどのくらいの風が入ってくるかを示す数値になります。日本では建築基準法により必要換気回数は0.5回/hと定められていますが、スキマが多い家ではACHの数値が高くなり、必要以上に空気が出入りする家になります。

例えば、ACHが1.37回の家では、スキマだけで1時間あたり家中の空気が1.37回(約3倍の換気)も換気していることになります。
多く換気する分には健康にもよさそうに見えますが、スキマから入る空気はフィルターなどを通していないので、侵入する空気にはホコリやカビなどの汚れが混ざりますし、室内に入らず間仕切壁の間をはしるので壁の間に結露ができたりします。
そのため、気密測定をしたらC値だけではなくもう一歩踏み込んで、n値やACHを確認し致命的なスキマがないか、必要以上に換気する家になっていないかもチェックしましょう。
まとめ:高気密な家づくりで寒く結露が多い家を回避しよう!

家の気密性が高まると、スキマ風がなくなり住宅設備が正常に稼働するため、夏は涼しく冬は暖かい家を作れます。また、スキマのない家では壁の間をスキマ風がはしらないので、結露や結露によるカビや腐敗などを防ぐことが可能です。
日本ではまだ気密性能に対する取り決めがなく、ハウスメーカーや工務店によってC値に大きな差が出てしまいます。同じ金額を支払っても性能が悪いと数年で住めなくなってしまう家もあるので、C値だけでなくn値やACHからも家の気密性能を判断し、C値=1.0㎠/㎡以下で致命的な穴がなく必要以上に換気しない高気密住宅家を目指しましょう。
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