【注文住宅】素人がDIYで断熱気密改修した家を丸裸にしてみた
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こんにちは、日本住環境 広報部(イエのサプリ編集部)です。
このブログでは良い家づくりに必要な情報を丁寧に解説していきます。
これから家を建てたいと考えている一般の方はもちろん、実際に家づくりに携わっている方にも「タメ」になる情報をお届けします。
2022年2月、イエのサプリ編集部は家中に断熱気密リカバリーをした北川さんのご自宅を訪問しました。
入居当時からエアコンの効きの悪さや、冬場の寒さに悩まされていたという北川邸。
ご主人が住宅性能について学び、家中の断熱気密欠損のリカバリーに着手されました。
その結果、イエのサプリ編集部による気密測定でなんとC値が1.0㎠/㎡まで改善したと判明しました。
そして初訪問から約2年後(撮影日時:2023年12月5日)の今回、さらに断熱気密改修を進めたという北川邸を再訪問させていただきました。
北川さんのさらなる断熱気密リカバリーで、住宅性能は2年前より向上したのでしょうか?北川さんが2年前から追加で施したリカバリーのポイントや、リカバリー後の住宅性能の調査結果まで詳しく解説していきます。
※イエのサプリ編集部では、リカバリーを推奨しているわけではありません。リカバリーをする際は専門家に相談の元、自己責任で実施してください。
目次 [表示させる]
【おさらい】気密性の低い家からリカバリーでC値1.0に!
まず、初訪問時の北川邸の住宅性能を簡単に振り返りましょう。
イエのサプリ編集部が訪問するまで、気密測定をしたことがなかったそうですが、リカバリー以前のC値はおよそ3.0㎠/㎡程度ではないかと考えられます。
北川さんが断熱気密リカバリーに着手するまで、冬場の寒さに悩まされており、和室や階段室につながる引き込み戸をすべて締め切らないと寒くてリビングで過ごせない状態でした。
そして、北川さんの徹底した断熱気密リカバリーの末、なんとC値が1.0㎠/㎡まで改善していました。
北川さんが2年前に行っていた断熱気密リカバリーは主に下記の3つです。
①家中の窓に内窓を設置
②約40か所のコンセントボックスに気密カバーを追加
③床下のスキマをすべて気密テープでふさぐ
イエのサプリ編集部と住宅に残されたスキマを調査し、現在に至るまで北川さんがさらなるリカバリーを施しています。
2年前の北川邸訪問の詳しい様子は下記のブログや動画でチェックしてみてください。
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2年前からさらに進化!断熱気密リカバリーを解説
前回撮影後から現在まで、断熱気密リカバリーを続けられていた北川さん。
なんと熱画像カメラも自前で購入し、家中の断熱気密欠損をチェックしてひたすら改修を続けられていました。
ご家族からも「夏に外から帰ってきたときに家の中がとても涼しかった」「夏・冬の冷暖房の効きがよくなった」「家の中が寒いと感じなくなった」「毎年冬に悩まされていた腰痛が治った」といった声があがるなど、2年前からさらに生活環境に変化があったそうです。
ちょうど今回の訪問の数日前に1階リビングのエアコンが壊れてしまったという北川邸。しかし、イエのサプリ編集部が伺った日も12月の朝にもかかわらず、寒さを感じませんでした。
それでは、現在の北川邸の住宅性能はどのように進化しているのか見ていきましょう。
北川さんにリカバリーのポイントを解説していただきながら、熱画像カメラで住宅内の温度差をチェックしました。
【断熱気密リカバリー①】間仕切壁のスキマを補修
1階の間仕切壁部分に2年前にはなかった点検口が増えていました。
熱画像カメラで見ると、この間仕切壁と床との取り合い部分がかなり青く(温度が低く)なっていて気になったそうです。
そこで、思い切って自ら点検口をあけて寒さの原因を探ることにした北川さん。
実際に点検口から確認したところ、土台を貫通して基礎まで刺さっているホールダウンのボルト(地震などで柱が土台や梁から抜けないようにする金物)の周囲に大きなスキマがありました。
このスキマが床下から間仕切壁まで冷気を届けていました。スキマをウレタン処理したことで寒さを感じなくなったそうです。
【断熱気密リカバリー②】床下の結露対策・断熱気密を強化
キッチンの床下点検口自体は建築時からありますが、点検口から伸びている配線は2年前にはありませんでした。
こちらは床下の結露対策として設置しているサーキュレーターの配線です。
夏場に北川さんが断熱材を追加するために床下に潜ったところ、既存の断熱材と大引きの交わり部分が一部結露していました。
そこで、夏場の結露対策としてサーキュレーターを設置したそうです。
床下の断熱気密を大幅に強化
(上図)2年前の北川邸の床下
2年前の訪問時も、床下は北川さんによってきれいに気密テープが貼られていましたが、現在はさらにリカバリーが進んでいました。
(上図)現在の北川邸の床下
断熱材が50㎜追加され計100㎜の厚みになっています。
弱点になりそうな部分はウレタンを注入して補強し、お風呂の配管は断熱カバーで包まれています。
2年前の様子と比べると、同じ家の床下とは思えないほど床下の断熱気密が強化されているとわかります。
【断熱気密リカバリー③】浴室の基礎断熱化
2年前の調査で、特に寒さがひどかったのが浴室です。
浴室は北側に配置されることが多く、また配管などが正しく断熱気密処理されていないと、住宅の中で最も寒い場所になりがちです。
北川邸の浴室はもともと床断熱+気流止め(左の図のパターン)が採用されていました。
上記の場合、浴槽と外側の柱の間に40~50㎜のスキマができるため、気流止めをしなければいけません。
気密テープやパッキン、断熱材などで気流止めしていくことになりますが、スキマの幅が大きく、なかなか適切に気密処理することが難しい方法です。
そこで、イエのサプリ編集部では家を建てる際はお風呂場だけ基礎断熱にする方法を以前からおすすめしています。
詳しくはこちらのブログをご覧ください。
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北川邸でもこの2年の間にお風呂を床断熱から基礎断熱化するリカバリーが施されていました。
もともとは床断熱のため通気パッキンが使用されていましたが、このパッキンをウレタンで埋め、基礎の内側にも100㎜程度の断熱材を貼り付けています。
基礎断熱に設けられた人通口は正しい処理をされていないと、床下から冷気があがってきてお風呂内を冷やしていきます。
そこで、北川さんは自作のフタを作り、人通口に取り付けていました。
フタは100㎜の断熱材でつくられており、取り付け後にさらに周囲を気密テープでふさいでいるため断熱気密がバッチリとれています。
熱画像カメラで浴室をチェックしました。
外気温はともに8℃の中、2年前はエアコン暖房をしていても最低温度が10℃を下回っていた浴室の床面が、現在では1階のエアコン(暖房)がついていない状態で最低温度15℃と大幅に寒さが改善しています。
【後日談】真冬でも暖かい浴室に
後日、エアコンの修理が終わった際の浴室の温度データが公開されていました。
ほぼ0度を下回る外気温にもかかわらず、浴室は22度と暖かい状態でした。
北川さんが浴室を基礎断熱化した効果を再確認することができました。
【断熱気密リカバリー④】玄関ドア・土間の断熱気密強化
2年前、浴室に続いてとくに寒い場所が玄関でした。
玄関ドアやドア枠は外気に直接触れるため寒くなりやすい場所です。
玄関も北川さんのリカバリーによって2年前からかなり変化をしていました。
玄関ドアのガラス面にはポリカーボネートを貼り付け、ガラス以外の面には14㎜の断熱材を貼り付けたうえで見栄えのためにリメイクシートを被せています。
さらに玄関の枠の金属部にも余った断熱材を貼り付けて表面温度を下げており、玄関全体の温度上昇にかなり寄与しています。
床は30㎜の断熱材の上から合板を敷き、見栄えのためにリメイクシートを貼っています。さらに玄関の基礎の一部には床下から100㎜の断熱材を貼りこんで断熱補強をしています。
実際に熱画像カメラで2年前と比較してみました。
2年前の最低温度と現在の最低温度がほぼ同じため、一見すると断熱リカバリーの効果があまり出ていないように見えるかもしれません。
しかし2年前は玄関全体が冷えていましたが、現在の玄関は土間のキワ部分だけが冷えています。
リカバリーをした部分はしっかり効果が現れており、弱点が明確になりました。
この土間のキワが弱点になっていることは北川さんも気づいており、調査時もこれからリカバリーをする予定だとおっしゃっていました。
【後日談】明確になった玄関の弱点もしっかり補修
実際に後日、北川さんがこの部分を断熱リカバリーされています。
断熱材を貼りその上から合板を被せた結果、改修前は10度近くあった入隅部の温度差が5度程度になっています。
この改修後の1月の温度データを見ると、-2.7度という外気温の中、北川邸の玄関はなんと19.8度。
ここでもリカバリーのすごい効果がバッチリでていました。
【断熱気密リカバリー⑤】下屋の天井断熱を強化
1階の天井部分に2年前はなかった点検口がつけられていました。
ここは2階バルコニーの床下部分(下屋)にあたるので、1階ですが天井断熱が施されています。
この天井断熱の状態を確認してから改修を行うため、工務店に依頼し点検口をあけたそうです。
実際に点検口から天井断熱の状態を確認したところ、壁側の断熱材の貼り方は正しく施工されていましたが、天井と壁の取り合い部分の気密シートがテープ処理されておらず、そのスキマから冷気が漏れていました。
熱画像カメラで1階の天井を調べてみると、やはり天井のキワ部分が冷えていることがわかります。特にリビング側の天井のキワが顕著でした。
【後日談】工務店に依頼し天井のキワの弱点もリカバリー
後日、工務店に依頼した1階天井部分の断熱改修がされました。
天井を剥がし、既存の断熱材を撤去して新たに断熱気密施工がされました。
特に冷えていたリビング側の天井キワにも高性能な断熱材が充填され、下屋の断熱気密リカバリーも完了しました。
【断熱気密リカバリー⑥】小屋裏の天井断熱を強化
小屋裏も北川さんによって大幅な断熱気密リカバリーが施されていました。
天井裏に入っていく点検口はもともと気密仕様でなかったため、北川さんが気密仕様に補修しています。
従来の点検口に断熱材が付いたフタを追加し、断熱性を確保しています。
さらに追加で100㎜程度の断熱材と木材を組み合わせた断熱フタも自作し、点検口を2重の断熱フタで塞ぐ仕組みになりました。
小屋裏の天井断熱には新築時から入っている10㎏の100㎜のグラスウールが敷きこまれていましたが、さらにロックウールを200㎜追加しています。計300㎜の断熱材が入り、高断熱仕様な小屋裏になりました。
ロックウールはホームセンターなどで袋入り断熱材として販売されています。
しかし、後から断熱材を増やす際に、袋入り断熱材の使用は結露するリスクが高いためおすすめできません。
もし袋入り断熱材を使用する場合は、袋から出して敷き込んでいくことが重要です。
詳しくはこちらのブログをご覧ください。
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北川邸では全部袋をはがした状態で桁や梁の上まで丁寧に敷きこまれています。
これなら結露対策もされたうえで断熱性能が向上するため安心です。
天井断熱強化の効果は、熱画像カメラでハッキリとわかりました。
外気温はともに8℃の中、2年前は13.7度だった天井面は現在は21.5度になり、約7度の温度上昇をしています。
2年前は13度だった廊下は23.6度となんと約10度の温度上昇をしていました。
【断熱気密リカバリー⑦】2階の壁に開口部を設ける
2階の寝室の壁に2年前はなかった大きな開口がありました。
エアコンの風が壁に吹き出してしまうのを改善し、暖気・冷気をほかの部屋に逃がすために大工さんに依頼して大きな開口を設けてもらったそうです。
また、この開口にはもう一つ目的がありました。
この開口部の天井のキワは屋根の下がり部分のため、懐が狭くて身体が入らず、補修ができていなかったそうです。
そこでこの開口部を大工さんに空けてもらったタイミングで、北川さんが室内側から断熱材を詰めこみ断熱気密リカバリーを施しています。
リカバリーによって天井キワの断熱欠損も改善し、こちらも約10度の温度上昇が確認できます。
また、開口を設けたことにより、エアコンの暖気が開口部から流れ、階段付近に取り付けられたサーキュレーターによって2階全体にいきわたるようになりました。
実際に、今回の訪問時はこの2階寝室のエアコン一台だけが稼働していましたが、1Fでも2Fでも寒さを感じませんでした。
夏場の空調を考慮し壁の下部にも開口部を設置
さらに、この大きな開口部の隣にもう一つ小さな開口が設けられていました。
暖かい空気は上昇するためこの大きな開口部を通り抜けていきますが、冷気は開口部の下の壁にとどまりやすく、夏場に熱画像カメラで確認すると開口部の下付近が青く見えていた(冷気が溜まってしまっていた)そうです。
そこで、北川さんは冷気を逃がすため壁の下側にも開口部を設けることにしました。
開口部の外は階段のため、ここから1階へ冷気が逃げることを想定しています。
実際に、本格的に夏に入る前は1階の冷房をつけるタイミングが遅くなり、開口部から1階まで冷気が流れていることを実感できたそうです。
壁に穴を空けてしまうという思い切った決断をされた北川さんですが、断熱や気密だけではなく、空調まで考えられたリカバリーでした。
断熱・気密性能が上がり、空調の効きやすい住宅に
冒頭の通り、今回の調査時は1階のエアコンが故障していましたが、普段はエアコン2台(1階と2階の一台ずつ)で全館空調(冷暖房により家中の室温を均質に保つ仕組み)に近い仕組みで運用されています。
全館空調は前提として、断熱性能と気密性能がよくないと機能しません。
家中の温度を均一にしようとしても、スキマがあるとそこから外気が出入りしてしまうからです。
この点からも、北川邸の断熱気密性能が向上していることがうかがえます。
断熱気密リカバリーの成果は?住宅に残されたスキマを徹底調査
ここまで、北川さんの努力によって家中が断熱気密リカバリーを施されていることがわかりました。
大きなスキマ(気密欠損)はほとんど補修されたように見えますが、まだスキマは残っているのでしょうか?
天井断熱の北川邸の小屋裏にフォグマシーンを設置し、住宅内から白い煙ができるかを確認します。
白い煙(スキマ風)が出ることによってその部分が弱点だと判明します。
結果は、なんと家中探してもどこからも白い煙を確認できませんでした。
天井部分や下屋、ダウンライト周りといった弱点になりやすい箇所からも白い煙は出ていません。
イエのサプリ編集部ではこれまで数多くの住宅でこのフォグマシーンによる検証を行いましたが、煙が一切確認できなかった住宅は北川邸が初めてでした。
相当な高気密住宅に進化していると考えられますが、気密性能は2年前からさらに向上したのでしょうか?
続いて気密測定を行いました。
追加リカバリーで気密性能が向上!C値=1.0㎠/㎡→C値=0.7㎠/㎡に
2年前のイエのサプリ編集部による気密測定ではC値1.0㎠/㎡だった北川邸。
すさまじいリカバリーを施した2年後の気密性能はどうなっているのでしょうか。
結果、北川邸の気密性能は2年前のC値1.0㎠/㎡からさらに向上し、C値0.7㎠/㎡という驚くべき結果となりました。
住み始めの気密性能が推定でC値3.0㎠/㎡程度だと考えられ、そこからC値0.7㎠/㎡まで気密性能が向上できたのはまさに北川さんの努力の賜物です。
北川さんのリカバリーはまだまだ続いています。ぜひ下記のSNSアカウントをチェックしてみてください。
Jun@お家リカバリー
【X(Twitter)】
https://x.com/jun_ouchirikaba
【Instagram】
https://www.instagram.com/jun_ouchirikabari/
北川さんが断熱気密リカバリーに着手してから約2年。
スキマは見当たらず、ほとんどの断熱気密欠損が改修され、C値0.7㎠/㎡と劇的な変化を遂げていました。
床下から天井まで、家中に断熱気密リカバリーが施され、もはやリカバリー以前とは全く別の家と言ってもいいかもしれません。
北川邸のように住み始めは気密性能悪い住宅でも、断熱気密リカバリーをすることによって、ある程度は寒い生活環境を改善することもできると証明されました。
しかし、ここまで住宅性能が改善したのは北川さんの現在まで続く断熱気密リカバリーの努力の賜物です。
施工後のリカバリーは費用や時間も多くかかってしまい、補修できない箇所も発生してしまいます。
実際、家のほとんどのリカバリーは北川さんご自身が行っていますが、壁の大きな開口部や下屋部分の天井断熱などは工務店に依頼されています。
また素人のリカバリーでは限界もあるため、やはり最も望ましいのは住むうえで納得できる住宅性能の仕様であること、リカバリーが不要な家を選ぶことです。
施工時にしっかり工務店と相談しながら高気密高断熱住宅を建てることが大切ですが、要所要所のリカバリー箇所については非常に為になる内容ですので、これから家づくりをされる方は是非参考にしてみてください。
気密性能の重要性についてもっと学びたい方はこちら
【大手ハウスメーカー】5000万の建売住宅がC値1.4㎠/㎡なのに隙間風で寒い理由とは?